恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
と島本がぼやくように言った、そのとき。
ガラッという音と共に入り口の扉が開いた。
その戸口に現れたのは……。
ふわっとした黒褐色の髪に、甘く端整な顔立ち。
面差しは少しシャープになり、落ち着いた色味のスーツが大人の男性の雰囲気を漂わせているが、透明感のある澄んだ双眸は昔から変わらない。
────月杜雪也。25歳。
花澄の初恋の人にして、『元婚約者』。
「……雪、くん……」
花澄は呆然と雪也を見つめた。
7年前に比べてかなり大人っぽくなった、その雰囲気。
東洋合繊の専務と言っていたが、まさにそんな感じだ。