恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



雪也は変わった。

なのに、自分は……。


仕立ての良いスーツを着ている雪也に比べて、自分は量販店の一着2000円程度のセーターに、古着屋で買ったジーンズという格好だ。

多分全身でも、雪也の服の1/10の値段にもならないだろう。

昔は服のことなんて気にもしなかったのに、大人になった今はその違いに気付いてしまう。

花澄は無意識のうちに一歩後ずさった。

雪也は嬉しそうに、懐かしそうに目を細めて花澄を見つめていたが、花澄の表情が変わったことに気付くと、その秀麗な眉を寄せた。


「……どうしたの、花澄?」

「……」


何と言えばいいんだろう。

花澄は戸惑いながら雪也を見上げていた。

そのとき。



「……ああ、ここにいましたか、花澄さん」



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