恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



花澄ははっと自分の肩をつかむ男の顔を振り仰いだ。

しかしそこにいたのは────黒いサングラスを掛けた、黒い瞳の男だった。

環によく似た、……けれど、違う人……。

暁生はくすりと笑い、花澄と雪也の間に割って入った。


「私の彼女に何か用ですか?」

「……彼女?」


雪也の瞳が驚愕で見開かれる。

暁生は雪也を眼鏡越しにじっと見つめながら、いつものハスキーな声で淡々と言う。


「特に用事がないなら、彼女を引き取らせていただきます」


暁生はぐいと花澄の肩を抱き寄せた。

そのまま踵を返し、大通りの方へと歩いていく。

花澄は驚きのあまり何も言えないまま、暁生に引きずられるように歩いて行った。


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