恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



────雪也の姿が見えなくなった後。


「…………」


暁生はふいに足を止め、花澄を見下ろした。

その瞳に浮かぶ、昏く鋭い光。

まるで射抜くかのようなその瞳に花澄は息を飲んだ。


「……あなたには、終わったら連絡しろと言ってあったはずです」

「暁生、さん……」

「どうして私に連絡しなかったのですか?」


花澄を責めるような声。

しかしその声に、切ない何かを感じたのは気のせいだろうか……。

何も言えない花澄に、暁生は畳み掛けるように言う。


「もし私が来なければ、あなたはあの男とどこかに行くつもりだったのですか?」

「……そんな……っ」

「7年ぶりの感動的な再会だ。たとえあなたにその気がなくても、向こうはきっと……」


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