恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




暁生の言葉に、花澄はカッと怒りが胸に湧き上がるのを感じた。

怒りに押されるまま、キッと暁生を見上げる。


「彼はそんな人じゃありません! あの人は……」


と言いかけた花澄に。

暁生はいつもの冷静さを振り払い、叫ぶように言った。



「────そんなこと、どうしてわかる!?」



悲痛に満ちた、その声。

その迫力に凍りついた花澄の前で、暁生ははっと我に返った。

花澄から視線を逸らし、心を落ち着かせるように大きく息をつく。


「……すみません、言いすぎました」

「……っ……」


暁生は目を伏せ、じっと地面を見つめている。

孤独と切なさ、そして哀しみのようなものが漂う、その横顔。

花澄はその横顔に、なぜか心が引き寄せられるのを感じた。


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