恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄は驚き、仰け反った。
350万円分というと相当な金額だ。
しかしそうなると、仕入もそれなりの金額になる。
売上が350万とすると、仕入は300万くらいかかる。
そして仕入の代金は、基本的にはその月のうちに払わなくてはならない。
しかもそれだけの商品を納品するとなると、何人かアルバイトを入れなければならないだろう。
「……お父さん、お金は大丈夫なの? 今月、仕入で300万払うってことでしょ?」
「幸い、今月はあまり仕入をしてなかったからな。来月、梁さんから入金されれば、それを来月の支払いに回せばいい。特に問題はないだろう」
「……そうだけど……」
花澄はうーんと首を捻った。
資金繰りを考えると危ない橋ではあるが、350万という売り上げは大きい。
それに大きな仕事を前に、生き生きしている父を見るのは久しぶりだ。
花澄は少し不安を感じながらも、再び手元の伝票に視線を戻した。