恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「こちらの店です」
と暁生に案内されたのは、小奇麗な造りの和食料理屋だった。
店内はさほど広くはないが、窓脇に置かれた生花や店内の所々に配置された籐のランプなど、細かい部分まで手入れが行き届いている。
個室に通された二人は、コートを脱いで向き合って座った。
「いいお店ですね」
「こちらの店は、豆腐が有名らしいので今日は豆腐懐石のコースを頼んであります。酒はいかが致しますか?」
「えっと、……お任せします」
「了解しました」
暁生はにこりと笑い、飲み物のリストを取り上げた。
店員に手早く注文する。
やがて一品目の折敷膳とともに、お酒が運ばれてきた。
折敷膳は脚のない御膳に刺身、御飯、味噌汁が載ったもので、どうやらこれが懐石料理のスタートらしい。