恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「さ、どうぞ」
「あ、いえ……その……」
「遠慮なさらずに。この酒は冷たいうちに飲んだ方が美味しいのですよ」
暁生は空になった花澄のお猪口にすかさず日本酒を注ぐ。
見ると、暁生のお猪口にも酒が注がれてはいるが、あまり減っていない。
「……暁生さんは、お酒があまり得意ではないのですか?」
「そんなことはありませんよ。周りからはザルと言われております」
「ザ……ザル?」
「そのせいか、酒に関しては少し味覚が麻痺しておりまして。なので私は自分が飲むより、飲ませる方が好きなのです。特にあなたのような魅力的な女性には……ね?」
暁生は言い、その綺麗な黒い瞳を細めて笑った。
……惹きこまれるような、その笑顔。
環にそっくりな、その笑顔……。
花澄はなぜか胸の高鳴りを覚え、慌てて俯いた。
やはり、似ている。