恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



確かに自分は『選べない』というトラウマを持っている。

しかし選べないのは、人を傷つけるのが怖いからだ。

それはとどのつまりは、それで自分が後悔し、傷つくのが怖いからだ。


凍りついた花澄の前で、暁生ははっと我に返った。

花澄の顔を覗き込み、焦った様子で何かを言おうとする。

しかし花澄は軽く首を振り、呟いた。


「そう、なのかもしれませんね……」

「……花澄さん?」

「私、昔から、何かを『選ぶ』のが怖いんです。……昔、私の両親が離婚した時、私は父についていく方を選びました」

「……」

「でもそのときは、それが母を捨てることだと気が付かなかったのです」


花澄は昔のことを思い出しながら、自嘲するように言った。



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