恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
自分のトラウマについては、あまり人に話したことはない。
けれど暁生になら話してもいいかと、────なぜか、そう思った。
花澄は目を伏せたまま、続けた。
「誰かを選べば、選ばなかった誰かを捨てることになる。……幼い私は、そのことを知らなかったのです」
「……」
「今でも私は、誰かを選ぶのがたまらなく怖い。だから選ばなくて済むなら、そちらの道へとつい傾いてしまう。……意気地なしですね、私は……」
花澄は昔の記憶に思いを馳せながら、呟くように言った。
暁生はそんな花澄を食い入るように見つめながら、無言で話を聞いていた。
……そして、話が終わった後。
暁生はなぜか目元を覆い、天井を見上げた。
とても苦しげなその横顔。
暁生は何かに耐えるように、ぎりっと唇を噛みしめた。
やがて大きなため息をつき、軽く首を振って花澄を見る。