恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
春燕は言いながら、暁生の顔をじっと見つめた。
まるで泣いているかのような、その寝顔。
7年前から変わらない、その辛そうな表情……。
春燕は深いため息をつき、暁生の黒髪をさらっと撫でた。
「……いや、あんたも心の奥では、それをわかってるんでしょうね。だから酒に逃げた。それ以外、方法がなかった……」
「…………」
「どうすればいいのかしらね。……でも答えは、あんた自身で見つけるしかない。それはあの子もきっと同じね……」
春燕は呟きながら、展示会の場で会った彼女の顔を思い出した。
暁生を明らかに意識していた彼女。
過去のことをもう全く何も思っていないのであれば、あんな切なげな目を暁生に向けることはないだろう。
彼女が暁生の正体に気付くのは、もはや時間の問題だ。
二人が真実にたどり着ける日は、やってくるのか……。
未来は見えない。
けれど、二人ともに在る未来を、願わずにはいられない────。
春燕は暁生の体にそっと毛布を掛け、書斎を後にした。