恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



雪也はにこりと笑う。

昔から変わらない、優しく朗らかな微笑み。

瞳に映る真っ直ぐな心根も、昔のままだ。

内心でほっとする花澄に、雪也は言う。


「君は? ……今、何をしてるの?」

「私は新宿の小さな会社で事務をやってる。いわゆるOLってやつかな」

「そっか……」


雪也は呟き、ふと目を伏せた。

運ばれてきたコーヒーに指を伸ばし、御曹司らしい、優雅な仕草で一口飲む。


「7年ぶり、か。……この7年の間で、俺は自分ではそれなりに変わったような気がしてたんだけどな。でも君の前に出ると、あまり昔と変わってないなって思うよ」

「そんなことないよ。雪くん、だいぶ大人っぽくなったし……」

「外見だけはね。でも内面はあまり変わってないよ。……大切なものも、欲しいものも、昔からずっと変わってない。自分でも呆れるぐらいにね」

「雪くん……」


眉を上げ見つめる花澄に、雪也は少し笑った。

その瞳によぎる切なげな光に、胸がキュッとなる。


< 160 / 389 >

この作品をシェア

pagetop