恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
雪也はにこりと笑う。
昔から変わらない、優しく朗らかな微笑み。
瞳に映る真っ直ぐな心根も、昔のままだ。
内心でほっとする花澄に、雪也は言う。
「君は? ……今、何をしてるの?」
「私は新宿の小さな会社で事務をやってる。いわゆるOLってやつかな」
「そっか……」
雪也は呟き、ふと目を伏せた。
運ばれてきたコーヒーに指を伸ばし、御曹司らしい、優雅な仕草で一口飲む。
「7年ぶり、か。……この7年の間で、俺は自分ではそれなりに変わったような気がしてたんだけどな。でも君の前に出ると、あまり昔と変わってないなって思うよ」
「そんなことないよ。雪くん、だいぶ大人っぽくなったし……」
「外見だけはね。でも内面はあまり変わってないよ。……大切なものも、欲しいものも、昔からずっと変わってない。自分でも呆れるぐらいにね」
「雪くん……」
眉を上げ見つめる花澄に、雪也は少し笑った。
その瞳によぎる切なげな光に、胸がキュッとなる。