恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



雪也の視線が真っ直ぐに花澄を見つめる。

……花澄の心を見透かそうとするような、その瞳。

花澄は視線の鋭さに息を飲んだ。


「あの男は君のことを彼女だと言っていた。……君は今、あの男と付き合ってるの?」

「……雪、くん……」

「正直に言って」


有無を言わせない言葉。

昔は、雪也がこんな風に花澄に言うことはめったになかった。

昔と同じように見えても、全てが同じというわけではないのかもしれない。

花澄は内心でうろたえつつ、言った。


「あの人は、その……一か月くらい前に知り合った人で。事情があって、今、お付き合いをしているの」

「事情? ……どういうこと?」

「えっと、その……」


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