恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「……あの頃は、俺もどうかしてた。君を手放したくない一心で、あんな卑怯なことをしてしまった。反省してるよ」
「ううん、私もあの頃、雪くんの気持ちに全然気付かなくて……。私のほうこそ、ごめんね……」
と、花澄が言うと。
雪也はくすりと笑い、優しい目で花澄を見た。
「……あの頃俺は、君が欲しくてどうしようもなくて、君への恋だけに夢中だった。正直言って受験なんてほとんど頭になかったよ」
「……それでも京大に受かっちゃうんだからすごいよ、雪くん」
「でもこの年になると、……なんというか、恋愛するにも基礎体力みたいなものが要るんだなってわかるよ」
「基礎体力?」
首を傾げた花澄に、雪也は軽く頷いた。
「恋愛だけだと、やっぱり心がいびつになってしまう。仕事とか趣味とか友人とか、そういう恋愛以外のものも、恋愛を上手くいかせるためには必要なんだなって今は思うよ」
「なるほど……」