恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




雪也の言葉に花澄は深く頷いた。

……確かにそうかもしれない。

恋愛だけに精神を集中させるのではなく、いろいろなものに興味を持った方が精神的なバランスが取れ、それらの経験がいずれ恋愛の糧になっていくのだろう。

視野の広さ、とでもいうのだろうか。

あの頃の自分に決定的に足りなかったもの……。

ふむふむと頷く花澄に、雪也は悪戯っぽく笑って言う。


「……というわけで。覚悟してて? 気長に待つとは言ったけど、何もアプローチしないってわけじゃないから」

「ゆっ、雪くん……」

「ああ、もちろん、君の嫌がることはしないから。そこは安心して?」


雪也はくすくす笑いながら言う。

花澄は困惑しながら雪也を見つめていた。



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