恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



花澄は唇を噛みしめた。

今月の給料が振り込まれるのは、25日だ。

しかもそれは先月分の勤務に対する給料なので、今から頑張って残業してもその分は反映されない。


となると……。


「…………」


どうにかして、50万を用意しなければならない。

しかし、どうにかといっても……。


消費者金融、だろうか。


正直なところ、それは最後の手段にしたい。

他に手はないだろうか……。


「……お父さん、私の方でも考えてみるから! また連絡するね」


花澄は言い、ピッと携帯を切った。

心を落ち着かせるように深呼吸し、ぐっと手を拳に握りしめる。


────冷静にならなければいけない。


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