恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
5.恋愛に禁じ手はない
その週の日曜。
17:00。
花澄はピーク・ハイアットのレストランの入り口で暁生を待っていた。
今日は少し気合を入れて、上品に見えるピンクのフリルカットソーと茶色のプリーツスカート、そして黒のジャケットを身に着けてみた。
暁生と会うようになって、わずかながら女度が上がってきた気もする。
なにしろ週に一回、かなり気合を入れてお洒落をしなければならないのだ。
けれど誰かと会うために化粧をするのは、なんとなくワクワクする。
それは、相手が暁生だからなのだろうか。
「……お待たせしました、花澄さん」
ハスキーなテノールの声と共に、エレベーターホールから暁生が姿を現す。
暁生はいつものように大人の男性らしい、落ち着いたスーツ姿で優雅な微笑を浮かべている。
花澄は慌ててぺこりと頭を下げた。
「あのっ、すみません。突然お呼び立てして……っ」
「いいのですよ。あなたのように美しい女性から誘っていただけるとは、男冥利に尽きるというものです」
暁生は眼鏡の奥の瞳を細め、艶然と笑って言う。
────やはり、女あしらいが上手い。
というか、どうやったらこんな言葉をすらすら言えるようになるのだろうか。
花澄は暁生にエスコートされ、レストランへと入っていった。