恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



レストランに入った二人は、奥まった個室へと通された。

個室は紅系のインテリアで統一され、部屋の柱に沿って灯された紅いランタンや壁際に置かれた茶器が中国チックな雰囲気を漂わせている。

部屋の奥には大きな花器が置かれ、赤百合が上品に生けられている。

一瞬、それが曼珠沙華のように見え────花澄は息を飲んだ。


こんな時期に、咲いているはずがないのに……。


しかしこの個室は、いつも暁生が連れて行ってくれるレストランの個室に比べて、明らかに華やかに装飾されている。

テーブルの上にも花が活けられ、カトラリーなどが綺麗に設えられている。

カトラリーの脇には、見覚えのあるワインのボトルが置いてある。

『シャトー・ディケム』の67年物だ。


「中国では、華やかな灯火のことを『花燭』と言います。転じて、婚礼の席上の灯火のことを意味するのですよ」

「婚礼の、灯火……?」

「花燭の典とまではいきませんが、あなたからの初めての誘いを祝して、ささやかですが酒席を設けさせていただきました。……といっても、二人きりですけどね?」

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