恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
暁生はにこりと笑って言う。
いつになく柔らかな、その笑顔。
花澄は思わずドキッとし、慌てて視線を逸らした。
それにしても……。
自分から誘ったことが、そんなにも嬉しかったのだろうか?
あんなに綺麗な本命の女性もいるのに……。
もちろん喜んでくれたことは嬉しいが、暁生の考えていることがよくわからない。
席に着いた二人のもとに、前菜が運ばれてくる。
暁生は慣れた手つきでワインの栓を開け、花澄のグラスに注いでくれる。
──── 一杯で諭吉×10。
さすがに値段を知ってしまうと、この間のように飲むわけにはいかない。
頬を引き攣らせた花澄に、暁生は訝しげな顔を向けた。
「どうしました?」
「え、いえ……」
「あなたのために用意した酒です。遠慮なさらずにどうぞ?」