恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



暁生は上機嫌な様子で言う。

花澄は恐縮しながらグラスを手に取った。

斜め向かいに座った暁生もグラスを手に取り、軽く掲げる。


「……では、乾杯」


カツン、と小気味良い音がグラスの間に響く。

花澄はグラスを傾け、ワインを一口飲んだ。

────やはり、美味しい。

しかしこのワイン5杯で、50万の価値があるのだ。

そう考えると、なんとも言えない複雑な思いが胸に広がる。

やがて控えめなノック音とともに、店員が中へと入ってきた。

丁寧な仕草で前菜をそれぞれの前に置き、一礼して部屋を辞す。

前菜は海老などの海鮮をメインにしたオードブルで、花澄はその上品で綺麗な盛り付けに思わず感嘆の声を上げた。


「わ、綺麗……!」


目を輝かせる花澄を、暁生が目を細めて眩しげに見つめる。

二人は酒を交わしながら、運ばれてくる料理を楽しんだ。

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