恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
──── 一時間後。
食事を粗方終えたところで、花澄は本題に入ることにした。
鞄から契約書を取り出し、暁生の前に広げる。
「……これは、売買契約書ですね?」
「ええ。この中国語の方の内容について、ご確認をお願いしたいのですが……」
暁生は中国語と英語の契約書をしばし眺めた後、ある一点で目を止めた。
眼鏡の奥の瞳が怪訝そうに歪められる。
「……おや、妙ですね。『支払条件』の項目が、中国語と英語では内容が違っています」
「えっ?」
「英語の方では、『支払いは納品確認後、当月内に行う』となっていますが、中国語の方は『支払いは弊社の都合により行う』となっています」
「え……ええっ!?」
花澄は驚きのあまり仰け反った。
つまり、それって……。
暁生はひとつ息をつき、花澄を見る。