恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「典型的な貿易詐欺ですね。日本の会社と中国の会社が取引をする場合、契約書は基本的に日本側で作るのが暗黙の了解となっています。それはこういうことがあるからです」
「う……うそ……っ」
「あの商談会で、商談の際は私に声をかけてくださいと言った理由は、まさにこれです。契約書を日本側で用意するのが難しい場合は、専門の業者に頼むことをお勧めします」
暁生の言葉に花澄は蒼白になった。
……貿易詐欺。
血の気が引いた花澄に、暁生は心配そうに言う。
「……あの、花澄さん。まさかとは思いますが、この会社と取引をしているわけではないですよね?」
「そっ、それが……その……」
「……え?」
暁生は驚いたように花澄を見る。
花澄はしばし考えた後、これまでの経緯について簡単に暁生に説明した。
暁生の顔がしだいに険しくなっていく。
……一通りの説明が終わった後。
暁生は花澄をじっと見つめたまま、口を開いた。
「……話はだいたいわかりました。で、資金繰りの方は大丈夫なんですか?」
「そ、それは……」