恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
6.再会
凍るような静寂がその場を支配する。
まるで時が止まったかのような、完全な静寂。
────やがて。
男は唇の端に歪んだ笑みを浮かべ、ふっと横を向いた。
腕を上げてすっと眼鏡を外し、両目に入った何かを取り出す。
男はそれをテーブルの上に無造作に放った。
小さな黒いガラスのようなそれは、ランタンの灯りを反射し鈍い光を放つ。
息を飲む花澄の前で、男はばさっと前髪をかき上げた。
前髪の下の、翳りを帯びた榛色の瞳。
清冽にして妖艶な、人を誘い込むような鮮やかな瞳。
見間違うはずのない、その眼差し。
記憶の奥底に刻み込まれた、その面影……。
「環…………」