恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



目の前が真っ暗になっていく。

そこまでの憎しみを向けられていたという事実が、花澄の心を打ちのめしていく。

環は白黒はっきりつける性格だ。

一度裏切った自分を許すことは、……ない。


環が自分の前に現れたのは、自分に報復するためだ。


花澄は震える声で言った。


「……環。お願いだから、お金は戻して……」

「戻したら、お前はあいつと結婚するんだろう? おれがそんなことさせると思うか? ……それに金を入れた以上、お前の婚約者はこのおれだ」

「……っ、環は私のこと、恨んでるんでしょ!? 愛してないのに、結婚なんて……っ!」


と、花澄が叫んだ瞬間。

環の目に一瞬、悲痛な影がよぎった。

ひどく苦しげな、何かを渇望するような、その瞳────。


環はその感情を隠すように、すっと目を伏せて横を向いた。

そのまま頬を歪め、クッと皮肉げに笑う。


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