恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「愛、ね。……よりによってお前がそれを言うとはな。そんなものが何の役に立つ? 何の価値がある? ……笑わせるな」

「環……っ!」

「愛だろうが何だろうが、これからは金で買う。お前もその方が自分を納得させられるだろう? 違うか?」


環はそこで言葉を止め、花澄を横目で見た。

……激しい憎悪と痛切な哀しみに満ちた、その瞳。

息を飲んだ花澄に、環は掠れた声で言った。


「いくらだ? ……いくらなら、お前は納得する?」

「……環……」

「5000万で足りないなら、もっと出してやる。6000万でも1億でも。好きな金額を言え」

「…………っ」

「ほら、言え。いくらだ? ────いくらなら、お前の心を買える?」


環の瞳がじっと花澄を見つめる。

荒みきり、憎しみに満ちた昏い瞳……。

その瞳の奥にある、魂が慟哭するかのような激しい渇望。

激情が入り混じった瞳が、花澄に告げる。


────自分をここまで追い詰めたのはお前なのだ、と。


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