恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄は凍りついた。
様々な感情が怒涛のように押し寄せ、もはや立っているのが不思議なくらいだ。
ガクガクと脚を震わせる花澄に、環は唇の端で少し笑った。
テーブルの上に置いてあったグラスにワインを注ぎ、花澄に差し出す。
「……喉が渇いただろう? 飲め。お前のために用意した酒だ」
花澄は朦朧とした頭で、ぼんやりとグラスを眺めた。
目の前で揺れる、琥珀色の液体……。
これはもう、酒ではない。
────人生の苦杯だ。
花澄はとっさにバッグを引っ掴み、身を翻した。
そのまま逃げるように部屋を飛び出す。
「……っ……」