恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
四章
1.報復
翌日。
「……」
花澄は泣き腫れた目をこすりながら、ゆっくりとベッドから身を起こした。
……一睡もできなかった。
昨日の衝撃がまだ心の中を荒らし回り、冷静に考えることができない。
けれど……。
急いで父に伝えておかなければならないことがある。
花澄は携帯を手に取り、父のアドレスを画面に表示した。
そのまま震える手で通話ボタンを押す。
やがて電話の向こうで父が出る気配がした。
「……もしもし、お父さん?」
『花澄か。おはよう。……どうした、こんな朝早くに?』
「……お父さん。驚かないで聞いてほしいんだけど。今、口座に5000万が入ってると思うんだけど、絶対にそのお金には手を出さないで」
『……は?』
携帯の向こうで父が呆けたような声を上げる。
花澄は念を押すように言った。