恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄はぐっと手を拳に握りしめた。
────まさか、これも……。
花澄は大家をじっと見つめ、震える声で言った。
「……あの、大家さん。どういうことですか? 何か事情があるんですか?」
「それがねぇ~。ほら、うちのアパート、もう築30年でしょ? そろそろ建て替えようと思って、あちこちの銀行に融資を申し込んでたんだけど、なかなか審査が厳しくてね」
このご時世、例えアパートなどの担保を持っていてもローンの審査は厳しく、そう簡単に融資してもらえるものでもない。
大家はふぅと息をつき、続ける。
「でも今朝、近くの地方銀行から連絡があってね。……特別に好条件で融資する、でもその条件が、『一週間以内に着工すること』……なのよ」
「……」
花澄は目を見開いた。
一週間以内って……。
なんという滅茶苦茶な条件だろう。
しかしこれで、ひとつわかったことがある。
────環は本気で自分を追い詰めようとしている。