恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




何しろ昨日の今日だ、まさかこんなに早く環が動くとは思ってもみなかった。

環は恐らくこれらのことを事前にある程度準備し、すぐに実行に移せるようにしていたのだろう。

でなければこんなに早く、こうまで物事が動くはずがない。

環の用意周到さに、そこに込められた憎しみに、胸が張り裂けそうに痛む。


やはり彼は、昔の彼ではなくなってしまったのか……。


7年前、環を傷つけたのは自分だ。

だから環が自分に報復するのはもっともだ。

環はやるとなったら徹底的にやる。

────情け容赦など、一切ない。


向けられる憎しみに、恨みに、心が凍る。

花澄は大家にわかったと告げたあと、ふらつく足取りでアパートの自室へと向かった。


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