恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~

2.環の素性




────19:00。


花澄はアパートの自室で、ノートパソコンを開いていた。

画面には『日払い・短期バイト一覧』の文字とともに、アルバイトの内容や時給などが表示されている。

……なんとか、今月末までに50万円を作らなければならない。

敷金の戻しで10万ほどは戻ってくるので、実質は40万だが、それでも花澄にとって40万は相当な大金だ。

どうせ仕事が自宅待機なら、その間に稼げるだけ稼がねばならない。

仕入代金の引落とし日は月末なので、実質あと10日ほどだ。

しかし……。


一時間前。

花澄は駅前の不動産屋に行き、一週間後から入居できそうなアパートがあるかどうか聞いてみた。

しかし店員は花澄の名前を聞くや否や、真っ青な顔になって首を振った。


『すみませんっ! あなた様がお気に召すような物件は、当社では取り扱っておりません。申し訳ございませんが、他の店を当たられてください』


どうやら不動産屋にも既に環は手を回していたらしい。

それから花澄は何軒か不動産屋を回ってみたが、返答はどこも同じだった。


環は、自分から全てを取り上げるつもりなのだ。

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