恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




『君が前に言っていた男の件。……少し気になって、俺の方で調べてみたんだ。そしたらとんでもないことがわかった』

「……雪くん……」

『花澄、……あれは、環だ』


雪也の言葉に、花澄は目を見開いた。

……まさか、雪也も気付いたとは……。

雪也はそのまま固い声で続ける。


『彼の香港の戸籍上の名は『林環』。俺達は知らなかったが、彼の父親は港南機業の現社長・林明杰だ。母親の律子さんは、社長とどうやら台湾留学中に知り合ったらしい』

「……!」

『身重になった律子さんは日本に戻り、日本で環を生んだ。そして環を育てるため、律子さんは君のおじい様を頼って鎌倉に来、君たちの屋敷で働くことになった』


花澄は呆然と雪也の言葉を聞いていた。

……これまで知らなかった、環の出生。

驚く花澄に、雪也は続ける。



< 209 / 389 >

この作品をシェア

pagetop