恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
『君が前に言っていた男の件。……少し気になって、俺の方で調べてみたんだ。そしたらとんでもないことがわかった』
「……雪くん……」
『花澄、……あれは、環だ』
雪也の言葉に、花澄は目を見開いた。
……まさか、雪也も気付いたとは……。
雪也はそのまま固い声で続ける。
『彼の香港の戸籍上の名は『林環』。俺達は知らなかったが、彼の父親は港南機業の現社長・林明杰だ。母親の律子さんは、社長とどうやら台湾留学中に知り合ったらしい』
「……!」
『身重になった律子さんは日本に戻り、日本で環を生んだ。そして環を育てるため、律子さんは君のおじい様を頼って鎌倉に来、君たちの屋敷で働くことになった』
花澄は呆然と雪也の言葉を聞いていた。
……これまで知らなかった、環の出生。
驚く花澄に、雪也は続ける。