恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
『それからは君も知っている通りだ。君と環は乳兄妹として一緒に育った。……多分彼自身も、自分の出生は知らなかったんだと思う』
「……」
『そして7年前、君と離れて香港に渡った環に、林家が接触した。彼はそこで日本国籍を捨て、香港の戸籍を取得した。恐らくそれには林家の協力があったんじゃないかと思う』
「……っ……」
『そして彼は『林暁生』として香港大学に通い、卒業すると同時に父親が経営する会社に入社した。それが港南機業だ』
花澄は雪也の話を聞きながら、7年前のことを思い出した。
環と別れてから、花澄は何度か香港大学に環が在学しているか問い合わせてみた。
しかし大学からの返事はいつも『相沢環という名前の学生は在籍していません』というものだった。
花澄はなぜ環が消息を絶ったのか疑問に思っていたのだが、まさかこういうことだったとは……。
花澄の頭の中で、バラバラだったピースが嵌まっていく。
なぜ彼が『林暁生』として自分の前に現れたのか。
以前、『暁生』はあざ名だと彼は言っていた。
偽名かとも思ったが、どうやらそうではなかったらしい。