恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



男は言い、パタンとドアを閉じた。

花澄は訝しみつつ、机の上に置かれた和服を広げた。

淡い藤色のグラデーションが襟元から裾に広がり、袂や裾の部分に和花があしらわれている加賀友禅の上品な着物だ。

末端価格で恐らく100万はするだろう。

花澄は躊躇いつつ、服を脱いで軽く髪を結い上げ、脇にあった長襦袢を手に取った。

長襦袢は着物の下に着る、いわば和装時の下着のようなものだ。

長襦袢を身につけたあと、その上から着物を羽織り、手順を思い出しながら帯を締めていく。

昔はたまに着物を着る機会があったので、着方は何となく覚えている。

花澄は一通り着終ったところで両足を開き、軽く裾割りをした。

こうしておくと歩きやすくなる。

花澄は全ての身支度が終わったところで男に声を掛けた。


男はほぅと眉を上げ、花澄の全身を見る。

男はしばし花澄を見つめた後、満足げに頷いた。



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