恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
一時間後。
男の隣に座っていたキャバ嬢は別の卓から指名が入り、花澄だけが残された。
男はどうやらこの店の常連のようで、キャバ嬢は別の卓に行く前に他のキャバ嬢を指名するか尋ねたが、男はなぜか花澄を指名した。
場内指名なので本指名ではないが、まさか初日で指名されると思ってなかった花澄は内心でかなり驚いた。
男は高価なボトルを何本か入れ、花澄も相伴に与った。
男は花澄を気に入ったのか、酒に赤らんだ顔で陽気に話しかけてくる。
花澄は最初は緊張していたが、一時間ほど経つ頃には場の雰囲気にも慣れてきた。
「……Let me pour you a cup.」
「Would you like some sake?」
「Thank you,……」
どうやらこの客はカナダのビジネスマンらしい。
この店は外人の要人御用達のお店らしく、そこそこの高級店で、客の方もそれなりにステータスがないと入店できない。
ちなみにこのビジネスマンは大手外資の部長さんで、日本には商談のために来ているらしい。
花澄は酒を作りながら、男の話にふむふむと耳を傾けた。