恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「……で。お話とは何でしょう?」
しばしの沈黙の後、環が口を開く。
……昔に比べて、数段低くなった声。
昔は低めのアルトだったのだが、今はハスキーな、バリトンに近いテノールだ。
「君も分かっていると思うが。……花澄の件だ」
雪也が言うと、環はクッと眉を上げた。
……まるで嘲笑うかのように。
その表情に、雪也は内心で息を飲んだ。
以前、環は自分の前でこんな表情をすることはなかった。
雪也は内心の動揺を隠しつつ、冷静に口を開いた。
「花澄は君が報復のために現れたと言っていた。……本当に、そうなのか?」
「あなたがそれを聞いてどうするのです? ……おれと彼女の間に口出しする権利はあなたにはないはずだ」
「君は一体、彼女に何をするつもりだ?」