恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「花澄はおれのものだ。……7年前、あなたは金の力で彼女を婚約者にした。同じことをしたまでですよ。あなたにおれを非難する権利などない」
「…………っ!」
「彼女は渡さない。……おれはようやく、自分の力でこのポジションを掴み取った。もう誰にも、邪魔はさせない!」
叫ぶような声とともに迸る、炎のような激情。
いつも冷静な仮面の下に隠れていた、環の本心。
その榛色の瞳に燃えているのは、まぎれもない――――恋情だ。
雪也は目を見開き、環を凝視した。
環は自分に報復しようとしていると言った彼女。
しかし今、雪也の前にいるのは――――
恋情と嫉妬に燃え、裏切られた哀しみにもがき苦しむ、傷ついた一人の男だ。
「………………」
雪也は喉を詰まらせ、目を伏せた。
環が昔と比べて変わったのかどうか、正直自分にはわからない。
けれどこれだけは言える。
――――環はまだ、彼女を愛している。