恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



雪也はひとつ息をつき、静かに立ち上がった。

環自身、それに気づいているのかどうかはわからない。

けれどそれがわかっただけでもここに来た甲斐があった。


絡みに絡まった恨みの糸は、ひとつずつ、ゆっくりと解いていくしかない。

自分が彼女のためにできること────。

……それはもう、ひとつしかない……。


今はまだ、あの事実を環に告げるときではない。

けれど多分、近いうちに告げることになるだろう……。

そう、きっと……。


雪也は心の中で決心し、ゆっくりと環の前から踵を返した……。


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