恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
時計を見ると、00:30。
どうやらうたた寝をしてしまったらしい。
環は大きなため息をつき、目元を片手で覆った。
ソファーから身を起こし、サイドテーブルに置いてあった水を一杯飲む。
香港に来たばかりの頃、何度も見て、今は絶え果てた夢。
この夢の中で死にたいと思うほどに、幸せな夢……。
どんなに心の奥底に沈めても、夢はいとも簡単に沈めた願望を暴き出す。
記憶の中で咲き香る、懐かしい彼女の面影。
誰よりも何よりも愛しい、あの面影……。
環は軽く首を振り、呻いた。
夢が幸せであればあるほど……
夢と現実の落差に、……その光明のない奈落に、心が折れそうになる。
環にとっては、現実こそが目覚めのない悪夢だ。
夢から覚めた瞬間に心を苛む、深い孤独。
発狂しそうになるほど、絶望的な深い哀しみ……。
「……花澄……」