恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



自分をここまで苦しめた彼女……。

彼女に復讐しなければ、自分は前に進めない。

しかし……。


『彼女を自分に夢中にさせたあと、彼女が大事にしているもの全てを奪い、彼女を破滅させる』


……もともと、それが目的だったはずだ。

しかしこんな自分を、彼女が愛するようになるはずがない。

正体が彼女に分かってしまった今、暁生としての自分を彼女に好きになってもらうことは、もう不可能だ。

そして、こんな自分を────彼女を陥れようとしている人間を、彼女が好きになることなど、ありえない。


「…………っ」


環はぐっと唇を噛みしめた。

彼女の気持ちがどうあれ、自分は彼女に報復すればいいだけだ。

なのに、どうして…………。


と、そのとき。

コンコンというノック音とともに、廊下に続く扉の向こうから声がした。


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