恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



木曜。

25:00。


店を出た花澄は、ふらふらした足取りで六本木の裏道を歩いていた。

────今日で、4日目。

昼は引越のアルバイトをし、夜はキャバクラで外人達の相手をする。

幸い期間限定なので栗山が同伴などは断ってくれているが、どうやら何人か同伴希望者がいるらしい。

そして指名も日を追うごとに増えてきている。

有難いと言えば有難いのだが、少し複雑な気もする。


『あなたは男性に『何かをしてあげたい』と思わせる不思議な魅力を持っている。清楚さや気品もさることながら、あなたのその雰囲気にお客様は惹かれるのでしょうね』


と栗山は言っていたが……。

確かに自分は高校まで、何不自由ない環境で育った。

しかしその原因の最たるものは、やはり環の存在だろう。

口は悪くても、自分のことをいつでも考え、尽くしてくれた彼。

今はもう失われてしまった、あの優しく温かい日々……。


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