恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



今日までの稼ぎは、35万ほど。

あと一日、明日働ければ、なんとか40万いくだろう。

花澄は酒でふらふらした頭で自分の手足をぼんやりと見た。


昼間の引越作業でできた、無数の青あざ。

まだ作業に慣れていないため、ついあちこち体をぶつけてしまう。

キャバクラが着物なのが救いだ。

これがドレスだったら、とても店に出られる状態ではない。


花澄はふらつきながら地下鉄の駅の方へと向かった。

……もうすぐ終電だ。

急がないと、と思ったそのとき。


「Hi , Aika!」


突然横から声を掛けられ、花澄はびくっと背を強張らせた。

見ると。

月曜日に店で花澄が応対した、カナダの外資の部長がにこやかな笑顔で近づいてくる。

顔が赤らんでいるところを見ると、どうやら酒を飲んだ後のようだ。

しかもかなり出来上がっている。

ちなみに花澄の店での源氏名は『藍花』で、男はしっかりそれを覚えていたらしい。


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