恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
5.情怨の檻
窓から差し込む朝陽が、白いシーツを眩く照らす。
花澄は何度か睫毛を瞬かせたあと、ゆっくりと目を開けた。
鼻につんとくる、消毒液と薬の香り。
そしてハーブに花の香が混ざった、清々しい香り。
……いつも環が自分の手に塗り込んでくれた、ハンドクリームの香り……。
ふと右腕を見ると、痣になった箇所に薬が塗られ包帯が巻かれている。
……大げさなまでのその巻き方。
服はいつのまにか脱がされ、パジャマを着せられている。
パジャマは恐らく絹だろうか、とても肌触りがよく高級品だとすぐにわかるような生地だ。
「…………」
花澄はベッドに横たわったまま、部屋の中を見回した。
見覚えのない部屋だ。
窓の外に都内のビル群が広がっているところを見ると、高層マンションだろう。
そして東京タワーが近いところを見ると、台場か汐留あたりだろうか。