恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「何すんの、環!」
「……お前はしばらくそこにいろ」
「行かせてよ! 今日行けば、50万になるのに……っ」
と、花澄が言うと。
環はおやというように眉根を上げ、クッと笑った。
……昔と同じ、花澄をからかう時の意地の悪い表情。
一瞬ドキッとした花澄だったが、それを隠すように慌てて環を睨み上げた。
「そうなのか? ……だが、残念だったな。お前はもうここから出られない。それにあの金は既に動いている。一足遅かったな」
「……どういうこと?」
「単純なことだ。今月は月末が日曜だ。だから引き落としは金曜に行われる。今朝、もう既に引き落としがされた。……お前は、あの金を使ったことになる」
環の言葉に、花澄は真っ青になった。
……もう、あの金を使ってしまった……
おののく花澄に、環はため息交じりに言う。
「……引落とし日の管理は資金繰りの基本だ。自転車操業だとしても、せめて扱ぎ方くらいは身に付けろ。でないと走る前に倒れる」
「……っ」