恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



花澄はぐっと唇を噛みしめた。

環の言うことは正しい。しかし……


……自分は、間に合わなかったのだ……。


俯く花澄を、環の瞳がじっと見つめる。

その眼に宿る切なげな光……。


「……お前はそこまでして、おれに……」

「……?」

「いや、なんでもない。……とにかくお前はここから出るな。必要な物は全て用意する。わかったな?」


環は言い、踵を返した。

……冷たい後ろ姿。


花澄の胸に切ない痛みが広がっていく。

環がどうして自分をここに連れてきたのか……。

……それは、自分に報復するためだ。

自分をここに閉じ込めて、報復して、恨みを晴らす……。

そのためだけにこんな場所まで用意するなんて……。


その行為に込められた憎しみが、……痛い……。



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