恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
環の憎しみが花澄の心を引き裂いていく。
花澄は目尻に滲んだ涙をぐいと拭った。
どうすればいいのかわからない、けれど……。
とりあえず急いで父に連絡を取らなければならない。
花澄はベッドの下に置いてあった自分の鞄から携帯を取り出し、父に電話を掛けた。
「……もしもし、お父さん?」
『花澄か! 後で連絡しようと思ってたんだが、実は今朝から大変なことになっててな』
「……え?」
と呆然と呟いた花澄に。
父は慌てた様子で続ける。
『中国人だか日本人だかよくわからん連中が、5人ほど押しかけてきてな。今は事務所を占拠して何かやってるようだが、わしにもさっぱり……』
父の言葉に、花澄の顔から血の気が引いた。
既に環は工房にも手を回していたのだ。
自分はもう、最後の逃げ場所すら失ってしまった……。