恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「…………」
この部屋はどうやら、誰かが使っていた部屋らしい。
ひょっとして、環の本命のあの人だろうか……。
あの人が着るには少し可愛すぎる服が多いような気もしなくもないが、ここまで物が揃っているとなると、誰かが使っていたとしか考えられない。
花澄はクローゼットの中から冬用のコートだけを拝借し、扉を閉じた。
コートはカシミアの黒いロングコートで、パジャマの上からでもこれを着ればとりあえず外は歩けるだろう。
……まずは急いで、工房に行かなければならない。
とコートを着て鞄を引っ掴み、部屋を飛び出た花澄だったが……。