恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



────10分後。

花澄は忍び足で玄関に行き、きょろきょろと辺りを見回した。

……環の姿は、ない。

花澄は意を決し、玄関に置いてあった自分の靴を履き、玄関の扉を開けた。

ガチャという音と共に扉が開き、花澄はその隙間からするりと外に出た。

辺りを見回すと、右の通路の奥にエレベーターらしきものが見える。

花澄はぐっと鞄の取っ手を握りしめ、エレベーターの方へと駆けだした。

そのとき。


ピピピピ、と何かが突然鳴り出した。

まるで時計のアラームのような、その音……。


花澄は慌てて携帯を取り出した。

しかし携帯は鳴っている様子はない。

花澄はその音が自分の左の方から聞こえてくることに気が付いた。

左手には金と銀でできたバングルが嵌まっている。

どうやら音はこのバングルから出ているようだ。


しかし、なぜ……。


と花澄が思った、そのとき。


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