恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



呆然とする花澄の耳に、パタパタと足音が聞こえる。

バンと扉が開く音と同時に、環が部屋に駆け込んできた。


環は花澄の姿を見るや否や、怒りを露わにして花澄の肩を掴んだ。

……昔はめったに見ることのなかった、環の怒りの表情。

しかし花澄も黙ってはいられない。

花澄は環を睨み上げ、叫んだ。


「環っ、なぜこんなものを!?」

「なぜ? ……理由など分かりきってるだろう。お前が逃げるからだ」

「……!」


どうやら環は花澄の行動を先読みしていたらしい。

環はこういうとき、恐ろしく頭がいい。

花澄は胸にこみ上げる恐怖を必死に抑えながら環を見上げた。

さっき食事を運んできたときの、環の言葉……。


『お前はもうここから出られない』


その言葉の意味を今になって理解する。

体を固まらせた花澄に、環はクスリと笑って告げる。



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