恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「…………っ」
胸に、軋むような切ない痛みが広がる。
花澄は込み上げる涙を必死で抑えながら、唇を噛みしめ、俯いた。
二人で分け合ってきた想い出が、今、砂となって消えていく。
……変わってしまった二人の関係。
懐かしい想い出が、ゆっくりと、心の中で暗い淵に沈んでいく。
自分はもう、環を完全に失ってしまったのだ……。
7年前に、自分が何を手放したのか────。
その失ったものの大きさを、否応なしに痛感させられる。
「……とにかく、ここから出るな。今度また逃げようとしたら、ただじゃおかない」
「……」
「わかったな?」
環は言い、花澄から離れた。
……昔とは違う、腰に響くようなハスキーな声。
その声に込められた冷たさが、胸に痛い……。
環はそのまま背を向け、リビングの方へと歩き出す。
花澄はその背が見えなくなったあと、両手で顔を覆い、嗚咽した……。