恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
環は震える指先で、そっと花澄の頬に触れた。
……幼い頃からずっと、彼女に恋焦がれてきた。
自分の信念と献身を武器にして戦う彼女の強さに、優しさに、心惹かれてきた。
しかし自分は、その『強さ』の裏にある『弱さ』に、ずっと気付かなかった。
────何かを選ぶことに恐怖を感じるという、彼女の『弱さ』。
ある意味、それは彼女の優しさの裏返しでもある。
誰かを傷つけることが怖いから、特定の人を選べない。
彼女の『優しさ』と『弱さ』が表裏一体なのだということに、あの頃の自分は全く気付いていなかった。
自分は、それを全く知らずに……
彼女に、残酷な選択だけを強いていたのだ……。
「……っ……」
これまでは、花澄が自分を捨てた理由を身分や金のせいだと思い込もうとしていた。
しかし、真実は……。
花澄は自分を『選べなかった』のだ。
それはつまり、花澄の自分への気持ちが、自分を『選ぶ』覚悟をさせるほど強いものではなかったということだ。
────今になって露呈した、残酷な真実。